キービジュアル

加齢黄斑変性について

イメージ

黄斑とは眼の奥の網膜という部分の中心・直径約1.5ミリの範囲を言い、物を見るにあたって一番重要な部分です。加齢とともに、この黄斑の働きに異常が起こり、視力が低下する疾患が加齢黄斑変性です。日本の視覚障害の原因第4位である加齢黄斑変性症は高齢者に多く、近年増加傾向にあります。
この疾患のリスク因子としては、喫煙、日光暴露、紫外線による酸化ストレス、偏った食生活などの関連が報告されています。

「滲出型」と「萎縮型」

加齢黄斑変性には、「滲出型」と「萎縮型」の2種類があります。
滲出型加齢黄斑変性には、黄斑の脈絡膜(網膜より外側にある、血管が豊富な膜)から網膜に向かって、異常な新生血管が伸びてくる典型的な滲出型加齢黄斑変性症やポリープ状脈絡膜症、網膜の血管の中に異常な血管ができる網膜血管腫増殖があります。新生血管は脆くて弱いので、容易に出血したり血液成分が染み出たりし、重篤な視力障害を来してしまいます。萎縮型は、網膜の細胞と脈絡膜が徐々に死滅していくタイプで、黄斑の機能はゆっくりと損なわれていきます。この萎縮型には、確率された治療法がありませんが、近年米国の大規模研究において、サプリメントによる黄斑変性症の予防効果が報告されています。この報告では、ビタミンC、ビタミンE、ルテイン、ゼアキサンチンの摂取により重度の加齢黄斑変性への進行を抑制したとされています。加齢黄斑変性症の前駆病変や萎縮型加齢黄斑変性症を認めるケースには、食生活やライフスタイルの改善とともに、サプリメントの摂取が推奨されています。

加齢黄斑変性の症状

滲出型では、黄斑に新生血管ができ、出血したり血液成分が染み出たりしてくると、重篤な視力障害が生じてきます。初期症状は、見ようとする部分の直線がゆがんだり、真ん中が暗く見えたりするなどです。病状が進行して出血や染み出しが増加すると、視力が低下し、色の識別も難しくなってきます。その結果、「見たいところがよく見えない」「読めない」「書けない」といった状態になります。萎縮型では、組織の損傷が緩やかに拡大するため、症状の進行もゆっくりしており、そうした状態になるのに10~20年くらいを要します。

加齢黄斑変性の検査

問診・視診後に、下表のような検査を行うのが一般的です。

視力検査
加齢黄斑変性では視力低下が生じますので、他の目の疾患と同様に、視力検査はやはり重要な検査になります。
アムスラー検査
方眼紙のような図を見てもらい、格子のゆがみ具合を調べる検査で、物がゆがんで見えていないかどうかがわかります。
眼底検査
目の奥にある網膜(特に黄斑)・血管・神経の状態をそれぞれ調べます。滲出型加齢黄斑変性では、出血や網膜のむくみなどが見られます。
蛍光眼底造影
特殊な光を当てると蛍光を発する性質のある造影剤を腕の静脈から注入し、新生血管などの状態を詳細に調べます。
光干渉断層計(OCT)検査
網膜の断層像を描出し、黄斑部の状態を調べます。網膜やその下の新生血管などの状態を立体的に把握します。

加齢黄斑変性の治療

滲出型では新生血管の活動性、中心窩との位置関係などによって、治療法はそれぞれ変わってきます。

抗VEGF療法
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、虚血によって血管内皮から分泌されるもので、新生血管の成長を促したり、血管透過性を高める働きがあります。VEGFは非常に強力な血管新生作用を持つため、加齢性黄斑変性症などの脈絡膜新生血管の発生にも関与しています。この働きを抑えるのが「VEGF阻害薬」です。眼球に注射すること加齢性黄斑変性症で視力障害を来している異常な新生血管の成長を止めて、縮小させるわけです。1回の治療は5分程度で終了しますが、繰り返し注射を打つ必要があります。
なお、新生血管を抑える治療としてはPDTがありますが、PDTでは視力が落ちる可能性があるため、視力が0.6以上に保たれているような場合は行われませんので、代わりにこの抗VEGF療法が選択されることになります。
当院でもこの抗VEGF硝子体注射を行っております。
光線力学的療法(PDT)
新生血管が中心窩にある場合に行われる治療法です。光線力学的療法は、腕の血管から注射した薬剤(光感受性物質)が新生血管に多量に入った際に、特殊なレーザー光線を照射する治療法です。新生血管の中に届いた光感受性物質が、光に反応して活性酸素を出します。活性酸素は毒性が強く、新生血管を損傷します。この治療に使うレーザーは熱がほとんど出ないため、中心窩の視細胞が焼けるようなことはありません。ただし、視力が良い人では、視力低下の可能性が出てくるので、通常は視力が0.5くらいまで下がってから行われます。この治療の目的も視機能の保持で、3ヶ月に1 回造影検査を行い、新生血管が固まるまで何度か繰り返します。