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糖尿病と糖尿病網膜症について

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糖尿病網膜症は、日本における失明原因第2位の疾患であり、糖尿病腎症、神経症とともに糖尿病の3大合併症のひとつです。眼はカメラと構造が似ており、フィルムに相当するのが網膜であり、糖尿病ではこの網膜が障害を受けます。血糖が高い状態が続くと、網膜の血管が損傷を受け、血管が詰まったり、変形したり、出血を起こすようになります。血管がつまることで網膜が酸欠状態となり、その結果として新しい血管(新生血管)が出てきます。この新生血管は未熟な血管のため、簡単に出血したり、血液成分が漏れ出たりします。出血を繰り返すと異常な増殖膜が形成され、これが原因となって牽引性網膜剥離を起こすこともあります。糖尿病網膜症発症の有意な危険因子として、糖尿病にかかって10年以上とヘモグロビンA1c(HbA1c(NGSP):8.4%以上)が報告されています。かなり進行するまで自覚症状がない場合も多く、見え方だけで自己判断するのは非常に危険です。糖尿病がある方は、定期的に眼科受診し、必ず眼底検査を受けましょう。当院ではかかりつけの内科と連携し、血糖値の管理と眼の状態を内科ドクターと共有しながら糖尿病との合併症を最小限に留めるよう全力でサポートしていきます。

糖尿病網膜症の検査

問診・視診後に、下表のような検査を行うのが一般的です。

視力検査
他の目の疾患と同様に、視力検査はやはり重要な検査です。特に矯正視力は診断において重要で、矯正視力が1.0以上出ないようなら何らかの異常があると推測します。
眼底検査
目の奥に光を当てて網膜を直接観察し、網膜やその血管の状態を調べます。散瞳検査をすると、より微細な出血も把握できます。
光干渉断層計(OCT)検査
視力障害を来しやすい黄斑部の浮腫を立体的に把握します。

「病期」によって症状も治療法も異なる

糖尿病網膜症の病期は、その進み具合によって大きく3段階に分けられ(単純・前増殖・増殖)、治療法もこの病期に応じてそれぞれ変化してきます。また、視力低下を引き起こす「糖尿病黄斑浮腫」(網膜中央にあって物を見るのにとても大事な場所である黄斑がむくんだ状態)は、これら全ての病期で起こることがあります。

単純糖尿病網膜症(初期の網膜症)
網膜に小さな眼底出血や白斑が見られますが、自覚症状はありません。血糖値を下げることで網膜を元の状態に戻すことも可能です。定期的な眼底検査による経過観察を要します。
前増殖糖尿病網膜症(中期の網膜症)
単純網膜症から少し進行した状態です。網膜における血流が悪くなり、毛細血管が詰まると、網膜が酸欠状態となり、異常で出血やすい新生血管が作り出されます。この虚血の段階を見逃さず、レーザー治療(網膜光凝固)を行えば状態は落ち着くのですが、そのまま放置すると、増殖糖尿病網膜症に進行してしまい、失明の危険性が高くなります。
増殖糖尿病網膜症(進行期の網膜症)
この状態になると重症で危険です。眼内に硝子体出血や増殖膜という線維膜が生じて、それによる難治な血管新生緑内障や牽引性網膜剥離など、様々な病態が引き起こされます。治療としては、レーザー治療(網膜光凝固術)はもちろん必要ですが、それでも進行を阻止できないような場合は、硝子体手術の適応になります。この段階になると血糖コントロールにかかわらず、網膜症は進行していきます。特に年齢が若いほど進行は早いため、慎重に経過を見ていく必要があります。
黄斑浮腫
黄斑は網膜の中心にあり、物を見るために最も大事な部分です。糖尿病により毛細血管が障害されると、血管から血液成分が漏れ出してむくみを形成しますが、それが黄斑に起こった場合を糖尿病黄斑浮腫と呼びます。糖尿病の方の9~10%に起こり、視力低下の主原因の一つであります。ステロイドや抗血管内皮細胞成長因子(VEGF)薬の注射が保険適応となり、有効な治療として確立されてきています。

*当院では必要に応じて、硝子体注射、網膜レーザー治療を行います。増殖網膜症に進行し、手術が必要な場合は、連携している専門病院にご紹介いたします。